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アニメーターが食えないのは売上をみれば当然の話

 

つまり、アニメーターのせい

 

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「日本のアニメがヒットしてもクリエイターにお金が届かないのはなぜか」

という記事に対する私の答えは「寝言をいうな、アニメは人気がないんだよ」になる。

 
それは2016年のアニメDVD・BDの年間の売上を見ればわかる
2016年TVアニメ 上位作品ランキング
(秋) 67,740 ユーリ!!! on ICE
(秋) 17,317 刀剣乱舞-花丸- (5巻/6巻)
(秋) 11,067 DRIFTERS
(夏) *9,436 B-PROJECT~鼓動*アンビシャス~
(春) *9,227 マクロスΔ
 
2019年はサブスク時代に移ってDVDランキングでは意味がないので、まだ円盤が売れてた2016年のデータで話そうと思う。もう一度言うがこれは「年間」売上で「週間」ではない。これは一巻の数字で、1位のユーリは6巻でているので総売り上げは6倍で40万枚くらいだろう。アニメのことを知らない他業界のオタクはアニメ市場の小ささに驚くだろう。「週間の売り上げじゃないの?」と。
漫画ではワンピースが1巻平均で300万部以上、鬼滅の刃が500万部以上、ゲームではモンハンやスプラトゥーンが300万本、どうぶつの森が600万本を売り上げる。国内だけでだ。なのにアニメは7万弱しか売れていない。ユーリが特別に売上が小さかったわけではなく、もっと少ない覇権アニメもある(ネットではその年に話題をさらったアニメを覇権と呼ぶ)。これはまだTOP10だからマシなほうで、今や年間で200本を超えているアニメの本数を考えると、下位作品の売上は数百枚レベルがゴロゴロしているだろう。こんなのでやっていけるわけがない。アニメが人気?どこの話ですか?
アニメはテレビやネットで無料で流すので、お金のない中高生にもリーチしSNS上で話題になりやすい媒体だ。その反応の規模だけを見て、アニメは人気があると錯覚する人がいるわけだが、しかし話題がお金を生み出すわけではない。他業界オタクならこんな売り上げでやっていけないと直感で分かる。アニメは数人で作ってヒットを生み出すインディー分野があるゲームと違って、低予算の深夜アニメにも100人規模の人手がいる労働集約型の産業だ。そしてそれが売上が数千枚レベルとなると、コストを回収できるわけがないというのは直感で分かる。
アニメ業界の問題がこじれるのは、アニメーター至上主義ともいえるオタクの責任が大きい。普通に考えればアニメーターが食えないのは「人気のないアニメを作ってるアニメーターが悪い」で終わる話なのだが、アニメの多くはテレビ放送によるビジネスモデルが基本なので、アニメオタクはこの構造をスケープゴートにして、責任を外部化するわけだ。いわゆる中抜きという陰謀論だ。
テレビで放送されているアニメの大多数はジャパネットたかたのようにテレビ局の枠を買い取って番組を流して商品購入を促すビジネスモデルだが、どういうわけだかアニメオタクはこの仕組みを中抜きという言葉を使ってテレビ局に批判を向ける。ジャパネットたかたが番組で紹介した商品の売り上げが悪くて赤字になったとテレビ局に文句を言うような話を真面目にしている。アイドル事務所も番組の枠買い取ってアイドル番組を放送しているが、それを中抜きとは言わないだろう。せっせと握手CDを買ってもらえるように頑張っている。
プラットフォーム企業が手数料をもらうのは当然の話だ。任天堂ソニーやSteamといったゲーム業界がそうだし、AppleGoogleといったスマホアプリもそうだし、映画における映画館もそうだ。しかしなぜかテレビアニメになると、オタクはテレビ局が中抜きをしているせいでアニメーターが貧乏なんだと憤る。けものフレンズ騒動でやたらと陰謀論でひっかきまわしたアニメオタクの厄介さは記憶に新しいが、世間知らずのアニメオタクはテレビ局や代理店、製作委員会を批判をする。
別の問題として多くが原作ものだということも原因だろう。マンガやラノベに頼ると、当然原作者や出版社が権利者になる。ただでさえ少ないアニメ会社の取り分がますます減ってしまう。多くのアニメ会社自前の資金でアニメを作らず、自前のIPでアニメを作らず、自分たちでプラットフォームを作らないでマージンを取られ、そしてろくに売り上げがないとなったら、アニメーターが食べていけないのは当然の話だ。
それにしても最近のネット企業への謎の期待は意味が分からない。テレビ会社への手数料を中抜きと呼ぶのに、なぜかNetflixは褒めたたえる。もちろんNetflixで配信するアニメが評判になれば収益が増えるだろうが、そんなのはテレビアニメにしても同じことだ。Netflixが変えるというより人気が出たら収入が増えるという当たり前の話だ。
現に新海誠がそうなっている。あえて中抜きという言葉を使うが、映画館という中抜きがあろうが、東宝という配給会社の中抜きがあろうが収入は増える。現状のシステムでもきちんと人気が出ればお金を払ってもらえるわけだ。DVDの売り上げランキングでもわかるように、アニメオタクはアニメ自体にはお金を払わず、無料アニメを見て、ネットで萌え萌えと騒ぎ、無料ゆえの拡散力をアニメの実力だと勘違いし、どこからともなくお金がアニメーターに落ちると思っているわけだ。そしてそれが違うとわかると、テレビ局や委員会に怒るわけだ。
ちなみに、ドラゴンボールのように、アニメ会社のオリジナルIPではなくとも世界で人気のアニメの場合どのくらいの給料をもらえるのだろうと調べてみた。
有価証券報告書調べで715万円となっている。まぁまぁの金額だ。少なくとも生活が苦しいレベルではないだろう。人気が出ればそれなりの生活ができるようである。他人のIPだろうが円盤に頼らなくても、世界的に人気がでれば食べていけそうだ。東映プリキュアも人気があり、こういうビジネスモデルは強い。やはりアニメーターを救うのはNetflixではなく人気であると言っていいだろう。それでいうと、鬼滅の刃は映画もヒットしたし、おそらくufoにはそれなりのお金が入ってくるだろう。ヒットしたこともそうだけど、なにより制作委員会方式でないのも大きい。分け前が細分化せずに、それなりの割合をもらえているはずだ。その点でアニプレックス高橋祐馬の功績は大きいだろう。
行政の問題ではなく、中抜きの問題ではなく、問題に対して行動しなかったアニメ業界に問題があると認識を改めるべきだろう。任天堂をはじめゲーム業界はクールジャパンと言われるはるか昔に、自力でゲーム機販売からやっている。ゲーム業界がアニメ業界に比べて金まわりがいいのは自分で行動するという意識が違うのではないだろうか。任天堂はハワードリンカーン氏に依頼して違法ソフトを撲滅するために行動した話は有名だ。ゲーム業界は行動する。業界が動くから消費者の意識も変わる。アニメ業界が行動しないので特に外国人は違法動画の視聴を開き直る連中を生み出している。
結局日本の労働問題にもつながる話だが、自分で動かず誰かが何とかしてくれると待ってるだけのアニメ業界の問題であり、ひろくいえば日本の労働問題に共通するものだ。だから「時代はnetflixだ!テレビ局ざまぁw」みたいな話をしたがるオタクをみていると呆れてしまう。中抜きも、他社頼みのIPも、そしてテレビ局を悪者にしてnetflixに期待するのも、アニメ業界の情けない姿でしかない。誰かが何とかしてくれないだろうかという他力本願こそが問題の本質なのではと思う。