AIベンチャーのAIは「しがらみ」を武器にできないよね
どうやって儲けを出すんだろう。
AIへの投資が盛んだけど、私は「その投資は返ってくるの?」と余計なおせわを考えてしまう。モノ売りビジネスの問題は、革新的なものもいずれ成熟し価格競争になってしまう事。客は安い商品に簡単に乗り換えてしまう。
それがITの時代では互換性という「しがらみ」を武器できるようになった。MSオフィスやAdobeのソフトがいい例で、客はブルースクリーンを吐き出すWindows95やMSオフィスに対して、文句言いながら使い続けた。なぜなら「みんなが使っているから」だ。今だとXがそうで、問題があってもみんなが使うから他のサービスに簡単には移れない。「しがらみ」がITビジネスでは重要。
AIビジネスはどうなるんだろうか。AIはファイル形式でやり取りはないし、SNS的なつながりもない。今のところ「しがらみ」はない。現にchatGPTからClaudeに乗り換えたという人は多い。PerplexityやGeminiなどの新しいAIもある。その時気に入ったものを使う。いろいろなサービスをはしごできる現状は利用者側からするとありがたい。しかしこれでAIビジネスはうまくいくのだろうか。
AIブーム初期のころは、AIメーカーのAI基盤上にアプリ載りそれが「しがらみ」としてビジネスが拡大していくので、AIで覇権を握ったら大儲けができるなと予想していたが現状はその逆になっている。WindowsやMSオフィスやAdobeのソフトといったすでに「しがらみ」があるソフトを基盤にして、その上にAIが載る構図になっている。AIで新興AI企業が旧IT企業を倒すと思っていたが、いまのところそんな事はなさそうだ。いずれAIベンチャーは、従来の大手IT企業に吸収されてしまうんじゃないか。
そうやって考えると、けっきょく一番儲かったのはツルハシを売ったNvidiaだったなんてオチになりそうだ。
モノづくりで負けることは名誉なことかも
負け惜しみ、精神勝利だと言われたらそうかもしれない。
でも、わりと本気でそう思う
ドイツの自動車メーカーフォルクスワーゲンのドイツ国内の工場が閉鎖を検討だという。ネットでは日本もそうなるのでは?と心配する声が多い。たしかに日本の自動車工場にも閉鎖の波が来るかもしれない。
ただ、そもそも製造業が人件費競争である以上、こうなるのは必然だと思う。自慢の工場が失われて感傷的になるのはわかる。しかし昔の日本で製造業が元気だった時ですら、工場と言えば地方にあるものだった。なぜなら製造業は賃金の安さが重要であることを意味しているからだ。
https://x.com/whitebea40/status/1851477699941826741
この方のツイートを参考にすると
業種別平均年収
電気ガス熱水道 747万円
金融保険 615万円
情報通信 599万円
学術研究教育 510万円
製造業 507万円
やはり製造業の収入は低い。ネットを検索すれば、工場勤務で月20万円で手取り15万なんて話はいくらでも出てくる。自慢のMADE IN JAPANといっても現実はこんなもんだ。そして中国の田舎では月5~8万円で一日12時間労働、週6日勤務なんて残酷物語が山のように出てくる。だから日本のメーカーの1/4でものが作れる。
参考になる記事を発見したので追記(2024/12/25)
参考になる記事を発見したので追記(2024/12/25)
家電は部品点数が少なく構造も簡単なので、いち早く韓国や中国に主役が移った分野だ。自動車は家電より部品点数が多く複雑だし、排ガス規制などの参入障壁があったので時間稼ぎができた。しかしEVではそれも出来ずにいよいよその時が来たというわけだ。ドイツに関しては安いロシア産のガスというチートもあったがそれも使えなくなったことも関係しているだろう。これは先進国で製造業の時代が終わることを意味しているのではないか。
自動車以上に部品が多く規制などの参入障壁のある航空機も、いずれは中国メーカーが台頭すると思う。ボーイングの不調はその合図かもしれない。まぁ航空機は安全保障の問題でそう簡単にはいかないだろう。しかし結局は給料と労働時間のチキンレースであることに変わりはない。
もっとも中国も給料は上昇傾向だし若者は工場勤務や長時間労働を敬遠しがちだという。いずれ中国も競争力が無くなり、製造の主役は東南アジアやインドやアフリカに移っていくと思う。べつにそれは中国にとって悪い話ではないだろう。次の産業に移る合図だと思えばいい。
アメリカは40年前からゆっくりと製造業中心の国家からITと金融を軸とする経済に移行したが、日本はモノづくり立国という幻想から抜けだせず失われた30年になった。そしてモノづくりが復活しないどころか、ITですら中国に抜かれ、金融も香港やシンガポールに勝てずにいる。結果、製造業もITも金融も強くない国になってしまった。
昔、似たような記事を書いた。
この時と結論は変わらないのだが、将来、日本製が残ってる状況は不名誉なことかもしれない。「日本に工場を建てます!なぜなら日本人は給料が安いからです。」
私はそんな未来が良いとは思わない。
青い目問題は自動車業界でもある話
面白い記事だけど、この記事が書かれる背景は怖い。最近よく言われるようになった欧米中心の価値観で断じる「青い目」問題だ。自動車業界でもそれが露呈している。
トヨタとVWは良く比較されるメーカーだが、両者の置かれている立場を考えずに「青い目」中心にEVストーリーを消費し比較をする。まずはVWの市場が、欧州と中国にしかないという背景を知る必要がある。
トヨタとVWは、規模こそ似ているが、売れている地域はかなり違う。
上の記事は2015年のものだけど、VWの売れてる地域は
EVを推してる欧州中国で75%
EV中立の日本アメリカで10%
そのほかで15%
と、欧州と中国に偏っている。そして、その中国市場で地元EVメーカーが台頭してきて、VWはそれに対抗するためにEVに力を入れるしかない状況なわけだ。一方のトヨタは
欧州中国で18%
日本アメリカ48%
そのほかで34%
トヨタは世界でまんべんなく売っているので、2030年にEVにするというプランはおかしい話だと分かる。
欧米の市場しか見ていない欧米メディアが記事を書き、出羽守がそれに同調する。アジア、東欧、中南米、アフリカはそこにないのだ。彼らの言う世界とは欧米のことで、あとはせいぜい中国くらいだ。
技術者(理系)の不幸話は、結局のところ文系差別の裏返し
楽天の三木谷(56)は一橋大学商学部卒業、ハーバード大学経営大学院
DeNA南場智子(59)は津田塾大学学芸学部英文学科
その下の世代でも
サイバーエージェント藤田晋(48)は青山学院大学経営学部
日本製の消滅を嘆くおじさんが多くて驚く
日本の製造業の不振のニュースは衰退ポルノというか、ネットでは人気コンテンツとしよく消費される。はてなブックマークでも盛り上がる。
「日本の製造業はおわりだ。だから日本は終わりだ」
そんな感じ。
私はそれを見るたびに、どうしてはてブの連中はIT系を仕事にしている人が多いのに製造業に未練があるんだろうと思っていた。しかしここ数年のアメリカのトランプ大統領の言動をみていて、ここにヒントがあると気づいた。説明するまでもないがトランプ大統領はホテル経営者だ。にもかかわらず製造業をアメリカの復活と結びつけて政治を動かしていた。
なぜトランプは製造業にこだわるのか。それはマチズモにあるのではないだろうか。製造業は巨大な工場が立ち並び、男達が大量に労働力として投入される。それが非常にマッチョ思想の人に、偉大な国家の風景として映るのではないか。
それにくらべてITは、椅子に座ってキーボードをカチャカチャとたたくだけの地味な風景だ。マッチョな活力は感じられない。かつて日本ではITは虚業といわれ、理解されなかったことからもわかるように、はたから見ると仕事の内容がわかりづらく、地味だしなめられやすい。「ごめん、ちょろっと修正してよ」なんて気安く修正を依頼されたりもする。五感で感じられる製造業のほうがわかりやすく映えるのだろう。
そういった事情があり、はてブのおじさん達も仕事はIT系だが実は精神的にはものづくりおじさんが多いのではと思う。私は製造業は、多少の例外はあれど終わりかけの産業だと思っている。だから本当の日本の問題は製造業の消滅ではなくて、それに代わるべきだったIT産業を十分に育てなかった事にあると思っている。そっちのほうがよっぽど問題だし嘆くべきだ。
日本にMSやgoogleやamazonが生まれなかったこと、そしていまだに日本からそれらを生み出そうとする気概がない事を嘆くべきだ。しかし政治家などが嘆くのはなぜかテレビ製造やスマホで中国や韓国の企業に負けたとか、いわゆるモノづくりの事ばかりだ。あったものが失われたというストーリーはわかりやすいが、最初からなかったものは嘆きようがない。だから考えようともしない。
製造業は終わりだというと「テスラの勢いがすごいぞ」と言う人がでてくるが、私はテスラの勢いは長く続かないと思っている。今のEV市場はほかのメーカーがEVに力を入れてなかった隙間を突いたブルーオーシャン期だ。EV業界が成熟したらコモディティー化して価格競争になる。スマホでいうとHTCみたいなものだ。スマホ初期はまともなアンドロイドスマホがHTCだけだったので勢いがあったが、ほかのメーカーが真剣にスマホ作り始めたら競争力を失った。アップルのようにOSやアプリプラットフォームで囲い込むこともできないので結局中国メーカーに価格競争を仕掛けられて終わる。スマホがそうだったし、アクションカメラのGoproも、ロボット掃除機のルンバもそうだった。結局のところ成熟すれば価格競争になる。つまりそれは人件費というチキンレースだ。
だから、これからは情報産業が重要だ。車では自動運転勝負になると思っている。ここで重要なことは所有ではなく利用での自動運転だ。ホンダがレベル3の自動運転を自慢しているが、自動車メーカー主体の自動運転はどうでもいい。なぜなら自動車メーカーの自動運転は車の所有が前提だ。結局のところ、車を販売するモノ売りという構造は変わっていない。
これから重要なのは、利用が前提の社会だ。そうなるとやはりGoogleなどのITサービス企業が支配するだろう。アプリで配車サービスを呼び出したら無人カーが来てそれに乗る。そういった情報産業ファーストな自動運転が重要になる。車のための自動運転ではなく、移動サービスのための車になる。そういうのはサービスファーストな企業でなければ厳しい。本当の日本の問題は、それを提供できる企業がないことだ、サービス企業に切り替えられずに、製造業を捨てられないからだ。
ちなみにもし日本企業でgoogleに対抗できるならどこだろうと考えると、しいていうならソニーだろう。製造業主体から情報ファースト、サービスファーストになりつつある。ベンチャー企業を別とするならトヨタやホンダではなくソニーが一番近い存在だと思う。ソニーは日本企業には珍しくサービス業への転換に成功した。もちろんハードウェアも作ってるが、おそらくこれからどんどん減らしていくと思うし、デザインやソフトウェアやサービスの提供はソニーが担当するがハードウェアは部品会社に委託するアップルがやってるような業態になるだろう。そのとき、ソニーの車がどこで作られてるかなんてどうでもいい。フォックスコンが作るならそれでいい。メイドインチャイナならそれででいい。製造業はそんな扱いになる。
もちろん例外はある。半導体や軍事など、自国に囲い込まなければいけない安全保障の問題がある製造業だ。しかし基本的には製造業は終わりだろう。そもそも20年後にメイドインジャパンがあるとしたら、それは不本意なことになる。考えの古い人は日本製復活!と言うかもしれないが世界はそのことを笑うだろう。日本人の給料が安いから日本で作っているだけだぞ(笑)と。今の中国のように。
それくらいのゲームチェンジが起きてるというのに、いまだに日本製が消滅するとか嘆いてるミニトランプだらけなはてブのおじさん達には呆れる。
参考記事
(第37回)Made in Americaから20年の何たる変化! | 野口悠紀雄の「震災復興とグローバル経済」 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース
世界を変えた「アメリカ製造業」たちの現在地 | 「米国会社四季報」で読み解くアメリカ優良企業 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース
電気自動車か燃料電池車かなんて議論は、BDかHDDVDかみたいな話で意味がない
世間じゃEVかFCVかトヨタかテスラかなんて議論に必死な人がいる。僕はそんなことより自動運転のほうが重要だと思う。燃料をどうするかの議論は、HDDVDかBDかみたいな争いで、答えはどちらでもなくサブスク動画サイトでしたみたいなオチになる。
モノからコトへ。
モノ時代は、所有の時代と言える。それゆえ所有するステータスとしてのメーカーを気にする。だからベンツだポルシェだといったブランドにこだわる人が出てくる。しかしコト時代は製造メーカーよりもそれをサービスとして提供している企業のほうが重要になる。
実際タクシーやバスや電車といったサービス業界では、日本交通、西武バス、JR、東京メトロ、阪神や阪急といった提供企業のほうが客にとって認知されている。それらに車両を提供しているUDトラックスや総合車両製作所といったメーカーを知ってる人はマニアだ。同じくタクシーがガソリンではなくLPG(液化石油ガス)で走っていることを知っている人も少ない。
モノからコトに変わるということは、客がモノに対して興味を持たなくなり、メーカーも動力も燃料も、客にとって重要な要素ではなくなるということ。EVかFCVかテスラかトヨタかなんて話よりも、客のスマホにどうやって配車アプリをインストールさせるかのほうが1億倍重要な時代になる。